文字が見えにくくなった人の姿から思う「文字が読める・書ける」ことの意味と大切さ

こんにちは。おにぎりです。

私は普段、目が不自由な方のサポートをしています。
そのなかで「文字を失った(=文字が見えなく・書けなくなった)」方々と接するうち、あることを実感するようになりまして。

それは「文字を読み書きできることは、当たり前と思いがちだけど、とても大切で、それ自体とても意味がある」ということです。

今回は、そのお話をさせてください。

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突然ですが、子どもが文字を覚え、読めるように&書けるようになる姿を見るとうれしくなりませんか? ああ、成長しているなあと、しみじみ感じられる瞬間のひとつですよね。

一方私は日々「文字が見えなくなった」「書けなくなった」というご相談を受けています。私は視覚障害が専門なので、多くは病気や加齢により見えにくく・見えなくなった方からのご相談です。子どもの話とはまさに逆ですね。

そのような方をサポートする方法として代表的なものに、文字を音声に変えるというものがあります。
具体的には「声の本(音訳図書)」や「ICレコーダやスマホで録音してメモする」など方法は色々です。特に近年はAI技術の発達がめざましく、スマホのカメラを文字にかざすだけで実用レベルで音声化してくれるアプリが登場するなど、以前に比べ文字を音声に変える手段は増えています。※この辺りの詳しいことは、また別の機会に・・

しかし、です。

私が出会う、目が不自由になった方の多くは、文字を音声で聞ける手段があると知っても、なお「できる限り自分の目で読みたい」「自分の手で書きたい」と願い続けられます。ずいぶん見えづらくなり、目で読むことが大変になっているのに、です。

文字を音声にする様々な方法を知っているからこそ、最初はその姿が不思議でした。楽で便利な音声ではなく、見えづらい目でなお文字を読もうとされるのだろう、と。

結果、その姿から「文字を読める・書ける意味と大切さ」と「文字を失うことの重大さ」を教えられました。同じ内容であっても「文字」と「音声」はそもそも別物だったのです。

それに気づくのに、少し時間がかかりました。でも今は、心の底からそう思います。

文字はそこに留まっています。自分の意思で手を伸ばして読むという、こちらからの働きかけによって、初めて意味を持ちます。

一方、音声は意志とは無関係に流れ、目の前を通り過ぎていきます。
聞き流すことはできても、音声を止めた瞬間、形としては何も残りません。

ある方は、私にこうボヤかれました。
音声を聞くだけだと、どうも頭に入らん。やっぱり書かんと覚えられんのよ。」と。

音声で文章を聞くのは受け身の作業ですが、文字を書くことは能動的な作業であり、そうして書かれた文字を自分で読む(確かめる)ことも、また文字への能動的な働きかけです。その働きかけが、とても大切なのでしょうね。※このあたり伝わりますか? 伝わるといいですが・・

なので、ごもっともだと思います。

ディスレクシア(読字障害・書字障害)や上肢の障害、教育機会の不足の場合も、目の不自由さと同様、音声化など技術の発達で助かる部分が多いと思いますが、文字の恩恵にあずかりにくいという点では、目の不自由さと似ているかと思います。

・・そんなわけで、以前は「文字が読みづらくなったら音声を使いましょう」と勧めていましたが、今は「目で文字を読みたい」という気持ちを大切にし、出来るだけおつきあいするべく、少しでも文字が読みやすくなるような、見え方(見えにくさ)に合う工夫や道具・機器をご紹介することを心がけています。※この工夫・道具・機器についても、またのちの機会にご紹介したいです。

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今日もおうちでは、お子さんが宿題として教科書とノートを広げ、「音読いやだー」「同じ漢字を10回ずつ書かないといけないなんてめんどうー」と言いながら文字を読み、鉛筆を走らせているでしょうか。

それがどれほど意味があり大切なことか、子どもでも分かるように伝えられると良いのですけどね。所詮見えてる私の力説より、目が不自由になり文字を失った方のお話し聞いてもらうのがいちばんいいのかな。

そうしたら、宿題もやるようになってくれるでしょうか・・いや、それとこれは別ですかね 笑

 

 

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